良く、からかって遊んでくれたものだ。
まぁ、奴の性格上それはある意味で仕方の無い事だったけれど。

「リオリ、」
「ん……?」

たまに、不意に降ってくる優しいキスは、熱を帯びていてそれでいて冷たかった。

「アーゼン、不意打ち!」
「ははっ、隙を作るからだぞ」

そういっては、彼は私を怒らせ、私は怒っているにもかかわらず笑顔が耐えなかった。

春が来て、
夏が来て、
秋が来て。
冬が来たかと思えば、
また春が来た。
何年も、そんな年が続いていたように思う。


不意のキスは、彼の悪戯。
心はない。
想いも無い。

私が彼をどう想っていても、それは彼には関係の無い事。
彼が私をどう想っていても、それは私が彼の玩具である事に代わりは無いという事。

からかわれて、反応を返す、ただの。人形。
私を動かすのは、貴方で。
私の世界に色が着くのは、貴方が居るから。
私の世界に音が溢れるのは、貴方が声を掛けてくれるから。

貴方が居なければ。
私なんてものは、色も音も失って。

ただの人形に戻るだけ。


* * *


「アーゼン、」

私からも、世界の螺子を回してみよう。
この世界が、たとえ壊れてしまおうとも。
私の手で、回してみよう。

「……リオ、リ」
「……なんでも、ない」

彼は、私の不意打ちに目を丸くした。
けれど、それ以上でも以下でもない。
ただそれだけだった。

螺子は、回らなかった。

私は世界から飛び出した。
変わらない、そのままでいることが、苦しいと思った。

世界は色を失い、そして音を失った。
失ったはずなのに、耳がキンキンと悲鳴を上げていた。




まぁ なんと
この世界は不自由なのだ

キミがいなければ
この世界に 色はない

キミがいなければ
音が無い

キミが いないから
耳が痛い


07/11/18