そっと、私の頭を撫でるその大きく温かな手。
 私が、大好きな手。

「リツってほんと、イイ子な」
「そ、そんな事ないよ!純クンがいるから、いい子にしてなきゃ…って」

 夕暮れ。
 公園のベンチ。
 少し肌寒い、秋の終わり。

 貴方と並んで座る、公園のベンチ。

「いい子にしなくても十分、リツはいい子」
「い! 嫌な子だよ、私。わがままだし、意地っ張りだし、今日だってみっちゃんのお弁当のトマトとって食べたし!」

 言葉を紡げば、紡ぐほど。
 彼の表情が綻んでいく。

「プッ・・・トマトとったの?」
「と、とったよ!プチトマト……おいしかった」



 にへっ、と思わず笑ってしまった。
 だって食べたかったし。
 だって食べたかったし・・・・・・甘くておいしかったんだもん。

 悔しがって俯いて、頬を少しだけ膨らませた。
 そんな姿も彼には見られていたようで。

「おまっ、可愛い」
「!!」

 バッ、と顔を上げて彼の方を見る。
 大笑いしている彼が、笑いを抑えて彼女の名を呼んだ。

「リツ、」
「ん?」

 首をかしげると、彼の顔がすぐそばにあった。

 一瞬、だけ。
 唇同士が重なり合って、すっとはなれた。

「好きだよ」
「・・・・・・わっ、わたしもっ!」

 勢い良く抱きついた。
 すると彼は、同じ言葉を、彼女の耳元で彼女だけに聞こえるように囁く。


(すきだよ)
 ――07/11/15