昼休み以降、残りの3限は全く頭に入らなかった。時間の進みが早く感じるような、遅く感じるようなめちゃくちゃな感覚で、とにかく緊張していることだけは理解した。


なんて言えばいいだろう。そう思ったとき、本当はどうしたいのと言ったあの子の顔が思い浮かぶ。

難しい言葉はいらない。俺は眞田をどう思っていて、どうしたいのか。それだけを伝えようと思った。



授業は全部終えて、残りの掃除時間。担当の教室前廊下をほうきで掃いていると、大きなゴミ袋を持った彼女が歩いてきた。

掬い取るようにゴミ袋をとって、代わりにほうきを手渡す。この子の友達もこの箇所担当だし、ここに残しても気まずくないだろ。


「ありがとう。でも持てるよ?」
「重いしでかいし、ゴミ袋に振り回されてたやつが言うセリフじゃない」
「……こういうのは、特別な子だけにやるの」


今日は最後に堪能させてもらうことにするね、と手を振られて、送り出されるままゴミ捨て場に向かう。

言いたいことはわかるけど、困ってることには男女関係なく手を貸したいとも思う。貸すなと言ってるわけじゃなくて、自分に好意を持っている相手に期待させるなってことか。


恋愛対象としてはみれなかったけど、人として好きにはなっていた。

だからこそ手は貸したいけど、自分だったらどう思うかという配慮に欠けていた。圧倒的に、あの子の方が精神年齢高い。甘えてばかりで悪い。


「井口、あの子といい雰囲気だよな~。付き合ってないんだろ?」
「付き合ってない」
「付き合う気、ないの?」
「好きなやついるから」


教室に戻る途中にクラスのヤツと合流して、流れのまま言ってしまった。え!?初めて知ったんだけど!と騒ぐから口止めしたものの、どれだけの効果があるものか。


あんまりこういう話、言ってこなかってからな。


「応援してて」
「え、井口かっこいい……抱いて」
「ばーか」


冗談交じりに言いながらも、がんばれよの一言がうれしかった。あと30分もすれば放課後がくる。



飾らない言葉で、伝えたいと思った。