毎週火曜、放課後図書室生活にもすっかり慣れた頃、制服は合服期間に入っていた。


半そでシャツにベストを着る眞田が新鮮で、思わず口から洩れそうになったのを手のひらで抑える。いや、突然クラスの男子からなんでもない服装褒められるとか、キモイだろ。


本棚の間を歩く後ろ姿から目線をずらして、後ろ頭をかいた。今日は相変わらず人気のない図書室で、珍しく図書委員らしい仕事をしている。

昼休みぎりぎりに大量の返却があったらしく、放課後にも残っていた分の配架作業。


「井口さ、最近隣のクラスの子と仲いいよね」
「隣のクラス?」


ふと思い出したように振り向かれて、手渡された本を上の棚にしまう。

別々にやればすぐ終わるとわかっていながら、どうせ暇だしと言い訳して、一緒に話しながらしまう作業が結構好きだったりする。


「髪の毛サラサラの女の子」
「ああ、仲いいか?」
「よく話してるなって」


井口、女友達多いイメージなかったからちょっと意外で、と後から言い訳のように付け加えて黙る眞田を見た。


そんな期待させるようなこと言って、俺をどうしたいんだ。

大丈夫、単に一番の女友達は自分だと思っていて、新たな存在とそう思ってた自分に動揺してるだけだってわかってる。


初めて別棟で話しかけられてから、あの子は本当に話しかけてくるようになった。その実行力を尊敬するし、普通に楽しく話せていると思う。向こうが俺に合わせてくれているんだろう気づかいを感じる。


それでも、恋愛対象として見れる気はしない。


「そう見えるなら、そうなのかもな」
「井口って女の子と何話すの?」
「なにって、おまえと話してるようなことと変わんない」


嘘、眞田と話すよりもっと表面的なことしか言ってない。


もっと適当にしか、話してないよ。