外は相変わらず騒がしい。

朝までこの騒ぎは続くのだろう。

なんせ、町会長の家の一人息子がいなくなったのだから。


今更拓磨を軒先に突き出すわけにはいかない。

ふらふらと夜道をさまよう拓磨を見つけて、家に帰せばいいものを自宅に連れてきてしまった時点で、わたしは幇助者、もしくは誘拐犯のようなもの。


明日の朝になれば、どうせすべてが暴かれる。

じいちゃんとばあちゃんに飛び火がないことだけを願いながら、拓磨の頭に手を置く。

指通りのいい髪の毛を梳いている間、拓磨はされるがままに大人しく目を閉じていた。


「仁美はどうして協力してくれたんだ?」

「籠の中の鳥みたいで、かわいそうだったから」


間髪入れずに答えると、拓磨はぴくりと片眉を上げて、上目遣いにわたしを見上げた。

髪を撫でているうちに、拓磨はわたしの太ももに顎を預けていて、目だけがきょろりとわたしを見据えている。


「けど、仁美が捕まえたのは籠の外の鳥だな」

「そうだねえ……とんでもないことしちゃった」

「父さんにはおれから話すよ」

「なんて説明するの?」

「おれが仁美の家に押しかけたって」

「嘘は言わないで」


村八分なんて文化はもう廃れているけれど、近く古い風習の根付いた町。拓磨がお父さんに掛け合ってくれるだけでも、処遇はだいぶちがってくる。

それがあれば、まっさらに戻ることはできなくても予め褪せさせて背負うことができる。


これ以上ないほどありがたい申し出なのに、わたしは首を横に振った。


嘘を吐いてまで今夜の責任を負わせたくない。


拓磨は、家を黙って出てきたこと。

わたしは、拓磨を家に匿ったこと。

それぞれに抱えて明日を迎えるべきだ。