自分が抱いた生徒のイメージが正しいと、あの教師は決めつけている。そう絵茉は怒っていた。とはいえ結果が全てであり、事前の努力はただの飾り。自身の文系科目の成績なら勝手な想像を持たれても文句は言えなかった。この場を除いてだ。


「じゃ、次のテストで最低八割はとって、見返してやろうな。テストでカンペは使えない」

「はい!」


 絵茉は国語という科目が苦手というのもあるが、それ以上に好きではなかった。半分は教師の人格が合わないことが原因であったが、文章題の読解、作者の考えを書けという問題や自分の考えを記せという問題に点数がなかなか得られないことが苦手意識に繋がった。

 作者の考えなど作者でないのだから分かるわけがない。正しい答えは本当に正しい答えなのか、作者に確認はしたのだろうか。

 自分の考えを記せとあるのだから、記した。なのに正しい解答が存在し、自分の考えが不正解になるのは納得が出来ない。

 古文を学ぶ意味も分からない。現代の今、歴史を学ぶ必要はあっても昔の日本語を学ぶ必要はあるのか。古典で得る古語は生きている上で使用することがあるのか。

 国語という科目の勉強は意欲を削られ、しかし受験には必要となるため絵茉は仕方なく一人で無理矢理こなしていた。それが今となっては楽しみの一部となっている。

 ただ、幸哉との勉強が楽しい。それだけであったが、それだけで十分だった。