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ノックを3回、それを少しの間を空けて計5回ほど叩いたところで、おもむろに寝室の扉が開いた。
「……ダニエル様、そろそろ昼も終わる頃合いです。いい加減になさったらどうです?」
呆れ顔のジェシーに、扉から現れたダニエルはチッと舌打ちをする。
「シェリルがやっと素直になってくれたんだ。あと数日は、適当に時間になったら部屋の前に食事は置いておいてくれ」
やっと抱き潰せるんだからあとは放っておいてくれ、と上半身裸で色気たっぷりに意味深に笑う我が主人に、ほどほどにしてあげて下さいよ、とだけ忠告してジェシーは扉を閉めた。
朝なかなか現れない若夫妻を心配した使用人に言われて訪れた寝室の中から、あられもない嬌声が聞こえて全てを察したジェシーがその数時間後に寝室を訪れるとそんなことを主人から言われた。
それでも、生まれた時から見ている我が主人がこれ以上ないくらい幸せそうに微笑むものだから、ジェシーもそっと口角を上げる。
できればこれからずっと、奥様が素直でいて下さいますように。