花びらの形は薔薇のようであるが、薔薇はその花のように一本のまっすぐな茎に一輪だけ花をつけるということはない。

赤い花は、まるで切り花がそのまま土に刺さっているようにまっすぐに茎を伸ばして咲いている。

その不思議な花に魅せられ、思わず手を伸ばした時だった。

「殿下! 触ってはなりません! それは魔女の――」

「え? 魔女?」

とシモンを振り返った時は遅かった。

――魔女の、なに?

ミルフレーヌはそのまま気を失ってしまった。