――国政ならば、宰相のカイルがなんとかしてくれるし、そもそも文句しか言わない私がいては、彼もやりにくいに違いない。

「いつまでそこにいるつもりだ?! いい加減にしろ」

「も、申し訳ございません陛下。ですが、国王も王妃もそれぞれ外遊中。このような時ばかりは出席して頂けませんと」

「マリィがいるであろう? なんの心配もないではないか」

と、そこへ。当のマリィが現れた。
「お姉さま」

泣きそうな声を出すのはミルフレーヌの妹マリィ。

同じ黄金の髪と紫色の瞳を持つ二つ年下の十八歳になる妹は、姉とは随分気性が違う。ミルフレーヌのように怒ることはないし、周囲の使用人にも優しく穏やかだ。
目元は優しく口元には微笑みを浮かべていて、見た目も可愛らしい。

「どうしたマリィ。お前まで」

「お姉さまが出ていくのが見えたから」

マリィは先に会場にいて、客たちを出迎えていたのだった。そういう気遣いや優しさが妹のマリィにはある。

「あとは頼む。マリィ、私はちょっと出かけてくるから」

「えっ? 舞踏会はこれからですのに? どちらへ?」

「ちょっとね。さあどいて、邪魔」

髪を一つにくくり、服装はスカートではなく半ズボンのようなキュロットを履いたミルフレーヌはマントを手にして、マリィを押しのけるようにして部屋を出た。

「お姉さま」

――マリィ。あなただけのほうが、皆も気を使わないで楽しめる。
だからこれでいいのよ。