シモンの声が響き、シモンの後ろに立つミルフレーヌを見たアーロン王子は、青ざめたように頬をびくつかせひれ伏した。

「し、失礼いたしました」

皆が心臓が止まる思いで凝視したのはミルフレーヌ。

黄金の髪をして、紫色の瞳をした王女の姿だった。

ミルフレーヌはシモンの脇から前に出て、瑠璃の剣をアーロン王子の喉元に突きつけた。

「王子は、我が国と戦争でもしたいのですか?」

「い、いえ、そのような」

「なら、なんなのです。え?」
「も、申し訳ございません!」

転がりながらアーロン王子がミルフレーヌの部屋を出ると、その場にいた皆が一斉にがヘナヘナとその場に崩れ落ちた。

「ミルフレーヌさま、お、お戻りになられたのですね」

「え? あ、そういえば」

怒りのあまり飛び出してしまったが、ミルはすっかり自分の風貌のことを忘れていたのである。

慌てて、ウイッグを外し自分の髪を引っ張った。
「イタタ。え? もしかして」

女官長が慌てて差し出した手鏡を手にジッと顔を覗き込むと、紫色の瞳が見返している。

「戻ってる……」

「陛下」
シモンが床に膝をついた。

――なんだ。
戻っちゃったのか。


それから一週間後。
また舞踏会が行われた。

ミルフレーヌの全快を祝うという名目であったので、今回ばかりはミルフレーヌも途中退場は出来ない。