シモンが一緒にいることもあって、王宮の中にも無事に入ることができた。

「お姉さまっ」
「マリィ」

姉の変わり果てた姿はさすがにショックだったのだろう。

赤い髪を撫でながら、マリィはハラハラと涙を流した。

「どうしてこんなことに……。これは魔女の魔法なの?」

「私が不用意に触った赤い花のせいらしい」

「戻ることはできないの?」

魔女の話を信じれば、こうなったのはミルフレーヌ自身が希望したことだという。本人が心から思うならば戻るはずだとも言っていた。
それをどう伝えたらいいか、わからない。

「わからない……。戻ることはできるようなことを魔女は言っていたと思うが」

「戻れるのね? よかった」

マリィはホッとしたようにミルフレーヌに抱きついた。

「とにかく、なってしまったことは仕方がない。とりあえず父上と母上が帰国したら今後の事を相談しよう」

「ええ、ええ、そうね」

女官長が用意した自身の毛髪で作ってあるウィッグをつけたミルフレーヌは、頭からローブを被り、抱えられるようにして部屋に入った。

ベッドの前に大きな衝立がある。

聞けばアーロン王子の見舞いを受けるために用意したという。

「お声はお変わりありませんので、ようございました」
女官長はそう言って、辛そうに涙を流した。