騎乗の人になったふたりは、話をしながら進んだ。

「俺がお前の身元引受人になる。リュシアンにどう説明するかだが」

「うん」

「他人の空似だったで通す。様子を見にいったら殊のほか剣が立つし本人が希望するので推薦することにしたということにする。ミルフレーヌが剣の達人のはずもないし、大丈夫だろう」

「わかった」

「王宮に着いたら、まずはマリィ殿下に会ってもらう。昨日殿下には報告しておいた。侍従長が場所を確保する」

「ああ」
――問題はそれからだ。

そう思った通り。シモンも「問題は――」と続けた。

「声だけの謁見で、アーロン王子をやり過ごしてもらうしかない」

「私の髪は抜けた一本でも集めてある。なので恐らく髪はなんとか誤魔化せるだろう。問題は瞳だ。こればかりはどうにもならない。やはり声だけでなんとかするしかないな」

メガネもコンタクトレンズがない世界だ。
おまけにその特異な容貌のおかげで、影武者を立てることもできない。

「まぁなんとかなるだろう」と、
ことも無げにシモンが言った。

「へえー、お前もそんなことを言うんだな」

振り返ったシモンはフードの中でフッと鼻で笑った。

もっとキチキチと規定通りに動く、四角四面の性格をしていると思っていた。

ずっと王女でいれば、気づかなかったかもしれない。

そういえば、彼は王女ミルフレーヌの伴侶として第二候補であったことを思い出した。

『お姉さま、リュリュとシモン。お姉さまはどちらかひとりに選べるの?』
『いざとなれば、コインでも投げて選ぶよ』
『またそんな……』

マリィが心配そうにそう言っていたことを思い出した。
それもいまとなっては昔の話だが――。