実際、先のことはわからない。
でも、この髪である限りもう王女としての人生はないのだ。

とりあえずは今回の急場をしのぎ、両親が帰ってきたら相談するしかない。

そして次の日、男をひとり連れたシモンが同じ時刻に現れた。

「食べていくか?」

「いや、時間が惜しい」
「そうか」

シモンが連れて来た男は、まだ少年のように見えた。

「子供ではないか」
そう言うと、少年は悔しそうに睨んだ。

「ダリだ。ちょうどいい。剣を交えてみろ。お前の腕も見たい」

外に出て早速、剣を抜いた。

最初に剣先をだしたのはダリ。
瑠璃の剣はするりとその剣をかわす。

剣に操られる手ではあるが、今まで戦った中で圧倒的に鋭い切っ先だということがわかる。
ミルが、へぇーと感心した時だった。

再びダリが一歩前に踏み込もうとした時、「止め」とシモンが二人の間に剣を伸ばした。

「もういい、お互いにわかっただろう」

ダリは不満気ではあったが、シモンには頭が上がらないらしい。

「我が家で預かっている孤児だ。年は十六になる。成人したらいい剣士になるだろうが、それまでここで働かせてもらえると助かる」

シモンがリリィにそう言ったので、ミルも「腕は確かだよ」と口を添えた。

剣も確かだが何より表情が豊かで見た目が可愛らしい。
エプロンがよく似合うだろう。

シモンもよく適任を見つけ出したものだと感心した。

準備は万端で、ダリは既に荷物を持ってきていた。

ダリを二階へ案内し、ミルはリリィに一旦の別れを告げた。