その王女を守ることに命をかける、素敵なナイトたち。

なんて素晴らしいことだと、泣いて喜びたいところだけれど――。

「騎士のくせに、怪我をするとはどういうことだ。訓練が足りないとしか言いようがないな」

「申し訳ございません」

「もういい!」

シモンの手を振りほどき、ダンスはまだ途中だというのに、ミルフレーヌはカツカツと、入って来たばかりの扉に向かって歩き出した。

「ミ、ミルフレーヌさま」
「殿下、お待ちを」

心の中では思っている。
怪我をして可哀想なシモン。こんなところに来ないでいいのよ? ベッドで休んで早く良くなって。

それなのに、何故だが口から出る言葉は、変わってしまうのだ。

「陛下、いかがなされました? も、もう退席なさるのですか?」

慌てたように女官長が追いかけてくる。

「気に入らぬ。このドレスのここ! どうしてここにビーズが付いているんだ? ダンスで腕を回された時に痛い!」

「も、申し訳ございません。それでは急いでお召換えを」
「結構。もううんざりだ」

「えっ……で、でも」
「あ、そう、リュリュはどうした?」

「リュシアンさまは、ご領地のほうで災害がありまして、途中の橋で足止めを……」
「ふん、そうか。もう顔は見たくないから、二度と来なくてよろしいと伝えなさい」

「えっ、あ、あの」

次から次へとのよくもこんなに文句を言えるものだと自分でも呆れるが、どうしようもない。