「ごちそうさま」という声を聞いて、ミルはシモンの元へ行った。

外で話がしたいと言うつもりでいたが。

「少し話がしたい。外へいいか?」
そう言ってきたのはシモンのほうだった。

「わかった」

――やはり、私だとわかったのか?
リュシアンから何か聞いたのだろうか?

シモンはあの場にいて、消えたことを知っているのだからリュシアンとは違う。
最初から見た目が変わっているに違いないと疑ってかかっただろう。
あの髪のままでは、どこにいても騒ぎになるはずだから、それは想像できたに違いない。

――もし、彼がそう疑ってくれたなら話が早いが。

外に出て、そんなことを思いながらシモンの後ろを歩いていくと、彼はそのまま通りを歩き続け、開けた場所に出てようやく立ち止まった。

周りを見渡して気づいた。
なるほどここならば誰も隠れることもできない。ふたりの会話を誰かに聞かれる心配はない。

「殿下でいらっしゃいますか」

やはり彼はわかってくれた。

「ミルでいい」と答えるとシモンはホッとしたように大きく息を吐いた。

「お探ししました」
「だから敬語を使うな。友達のように話をしろ、これは命令だ。この前、リュリュが店に来たぞ」

少し沈黙した間に、シモンはようやく敬語を捨てる決心をつけたらしい。

「昨日、会った。あいつはお前に気づいたかもしれぬ。ミルフレーヌさまにとてもよく似た赤毛の女がいたと言っていた」

「そうか。それで、城のほうはどうだ」