無言のまま厨房へと戻り考えた。

――とにかく、この機会を逃すわけにはいかない。
なんとしてもシモンに信じてもらって、城へ入り、マリィと話をしなければ。

ミルは傍らに置いておいた剣に目を向けた。
いま、リリィに話をしなければならない。

「リリィ。実はあの客に、志願しようかと思っているんだ」

「え? 志願って軍隊へ?」

「恐らくあの人は軍の上官職についていると思う。話を聞いてみようと思うんだ」

「そ、そうなの……」

突然のことにリリィは動揺しているが「なぁに、話を聞いてみるだけだよ」と笑いかけた。

「うん。そうよね、ミルをこのままここに縛っておくわけにもいかないものね」

――ごめん、リリィ。
でも行かなきゃいけないんだ。