それについては何も問題ないが、問題は最初に描かれていたアーロン王子のことだ。

――まずい。

アーロン王子にミルフレーヌがいないことが知れてしまっては、あの男のことだ、強引にでもマリィとの結婚を進めようとするだろう。

『あと一週間のうちにはなんとかそっちへ行くわ。それまでがんばって M』

そう返事を書いてロロの足に手紙を括りつけた。

「ロロ、よろしくね」

父と母が外遊から帰るまで。こんな姿になったことは、たとえ国内の者でも誰にも知られてはならない。なんだかんだいってミルフレーヌは絶対的存在だった。

傲慢で嫌われている王女だとしても、思い通りにはできないと思われている。
意図せずそうなったのだが、それは大切なことなのだ。

こうなってみて、それがよくわかる。
ミルフレーヌならアーロン王子などさっさと国へ追い返すことができる。

マリィではやはり弱い。王子は何かを知り、マリィの足元を見て居座っているに違いなかった。

ミルフレーヌが消えたことが王都で噂になどなっていないか、店の客の噂話に聞き耳を立てているが、いまのところそんな様子はない。

とにかく今後のことを話し合いにいかなければ。でもどうしたら――。
手紙には戻ると書いたものの、正直どうしたらよいかもわからない。


悶々と過ごしていた、数日後。

ランチ時を過ぎた、リュシアンが現れた時と同じ頃。

今度は黒の騎士シモンが現れた。