酷い言葉で言い返してもクスッと笑う余裕があって優しくて。
彼は頭がよくて、教えてもらうことは多かったし、ミルフレーヌにも物怖じすることなく注意をしてくれる貴重な存在でもあった。

「くそっ! 別にええわ。次はこの剣で成敗してくれるっ!」

夜空に突き出すと剣は、瑠璃色にキラリと輝き、と同時に、ふと鳥の羽音が聞こえ、久しぶりにミミズクのロロが姿を現した。

「ロロ」

今夜はロロのために用意してあった餌もある。

窓辺でくつろぐロロに干し肉をあげ、ミルは早速ロロの足に括りつけてある手紙を開いた。

前回の手紙が無事届いたことで安心したのだろう。今回の手紙には、細かい文字がビッシリと詰まっている。

『お姉さまその後、ご機嫌いかが? 実は大変なの。あの舞踏会の日からアーロン王子が居座っているの。お姉さまにご挨拶をしない限りは国に帰らないって。体調がすぐれないからってお断りしているんだけれど、もしかしたら何か感づいているのかもしれないわ。どうしたらいい?』

そうはじまり、今回のことを知っているのは、あの日森にいたシモンと追いかけて来た侍従長と女官長の三人だけだということ。他の人には、とりあえず病に臥せっているということにしたこと。
捜索隊を出すわけにもいかず、ただミルフレーヌが戻ってくるのを待つしかないということになっているということが書いてある。