ついでにいくつか思い出した料理も言ってみた。

――ここで食べたことなくて、美味しかったもの。
フライ。お好み焼き。あ、そうそうマヨネーズ。

「リリィ、卵と酢と油をちょっと貸してくれる?」

前世では母によく手伝いをさせられてマヨネーズを作った。
節約とかオーガニックとかそういうことにうるさかった母は基本なんでも手作りをしたのである。

自作のマヨネーズはその時々で蜂蜜を入れて甘くしたり、マスタードやワサビを入れて辛くしたりカレー粉を混ぜたりした。
茹でただけの野菜でもなんでも、マヨネーズは万能調味料だ。

卵は黄身だけを取り出し、塩とよく混ぜる。黄身が乳化剤の役割をするので常温に戻しておく必要があるが、この世界には冷蔵庫がないのでその心配はない。
混ぜながら油を細くたらして混ぜ混ぜ混ぜ。

乳化していることを確認しながらその後に今度は酢を垂らす。フワーッと白くなったらもう心配はない。あとは味を調整して出来上がり。
蜂蜜を少し混ぜたものを味見する。

「うんうん、これだ」

あらためてスプーンで掬い、リリィの口元に差し出した。
「味見てみて?」

ペロリと舐めたリリィは目を丸くする。
「なにこれ、美味しい!」

「茹でた野菜につけたり、卵焼きにのせたり、炒め物につかっても美味しいと思うよ。マヨっていうの」

「マヨ? へえ」