親とはぐれて弱っていた小鳥の頃に、ミルとマリィのふたりで寝ずの看病をしたことを覚えているのだろう。

姿は変わっても、ロロにはミルがわかるらしい。
迷うことなくミルの部屋を目掛けて飛んできたのである。

窓を開けたのは、瑠璃の剣の輝きを確認するためだったが、思わぬ訪問者に心が弾んだ。

「私がわかるのか?」

ロロには心のまま優しく接することができる。口汚く罵ることもない。健康になったところで山に返したが、それから時折会いに来てくれるのだ。

羽根を広げて頭をこすり付けるように甘えてくるロロを撫でていると、ふとロロの足に紙が括られていることに気づいた。

「手紙!」

見ればそれはマリィからの手紙で、ミルを心配しているものだった。

『お姉さま、元気でいるなら教えてください。まずはそれだけでもいいです。どうかどうかご無事で。誰にもロロのこともこの手紙のことも伝えていません。 M』

急いで返事を書いた。

『無事だ。ただ、金と紫は無くしてしまったけれど、居場所も落ち着いてとても元気だよ。いつか必ず会いに行くからがんばって! M』

あの手紙は無事にマリィの元に届いただろうか。
二週間経ったいまも返事はなかった。

「マリィ……」

王女に未練はない。
黄金の髪にも紫色の瞳にも何の未練もないが、でもマリィのことはやはり心配だ。

たったひとりの王女として、これからマリィは重責を負うことになる。