――魔女の言ったとおりならば、やはり私は逃げたかったのか?

黄金の髪という逃げられない刻印のようなものから解放されて、自由の身に慣れたことは正直うれしいし、肩の荷が下りたことは正直ホッとしている。

「でもなぁ、マリィ。大丈夫かなぁ……」

マリィの場合は自らが女王になるということは、まず考えつかないだろうと思う。いい夫を他国から迎えて王になってもらうというしかないだろう。

――王子がなぁ、問題なんだよなぁ。

隣国で他国に来てくれる王子となると限られてくる。

女王になるならば伴侶が王族でなくても、一応の貴族であれば問題がないが、王として迎えるからには王族であることが必須条件だ。

なので今日も、他国の王子が客としてアピールに来るわけだが――。
今日の客、アーロン王子は今頃マリィを口説いているのかもしれない。

大丈夫かなぁマリィ。などと、つらつら考えながら歩くうち、街道へ近づいてきた。

道行く人々の姿が見える。

時代的なものなのか、まだこの世界には車も電気もない。人々の移動は貴族や裕福な商人ならば馬車か馬。タクシーのように旅人を乗せる馬車や駕籠というのもあるが、庶民の基本となる移動手段は徒歩だ。

脇道から街道へ出ると、ほどなくして里が見えてきた。