やれやれとため息つき、不安を払拭するために剣をかざしてみた。

――ちょっと練習してみるか。

「お相手お願いいたします」と、大木に向ってお辞儀をする。

木肌に傷をつけては申し訳ない。鞘をつけたまま、目標を定め「やー」と、剣を振ってみた。

相手は木なのでいまいちよくわからないが、なるほどジッと見定めたところに剣の先が当たる。

「ほぉ」

いまでも時々シモンを相手に剣を振るが、こんな風に思うがまま動いことはない。そもそも普通の剣はもっと重たいから、男のように軽々と動かすことはできないのだ。
その点、この瑠璃の剣は自分の手の延長のように動く。
これなら、その辺の無頼者には勝てるかもしれない。

ひとしきり剣を試してみたところで、次は水を探すことにした。

何もできない王女とはいえ、なにしろミルフレーヌには前世の記憶がある。
災害時に欠かせないものは、食べ物より先に、まずは水だということを覚えていた。

幸いなことにこの王国は水が豊富だ。
そこかしこに湧き水があり、林を流れる細い小川を辿れば清らかな水がある。

そのための水筒が必要なので途中の竹林で竹を切ってみた。

「えい!」

竹は見事に切れた。
切れ味の良さには驚くばかりだ。

「凄い」
夜が待ち遠しい。月明かりで瑠璃色に輝くところを早く見たいと思った。

ほどなくして見つけた湧水から水を飲み、竹筒の水筒にたっぷりと水を入れて蔓を紐にして腰に括りつける。

水の確保。
さて次はどうしようかと考えながら里に向かった。