それは魔女の身長ほどはありそうな剣だった。

剣としてはごく普通だが、その大きさがあると、女性には重たい。
ミルフレーヌは護身程度に剣の使い方程度は子供の頃から習っている。実戦ではまったく使いものにはならないだろうが、ともかく剣の重量がどのようなものかくらいはわかっていた。

それなのに、小さな魔女は小枝でも扱うように「ほれ」と、剣を差し出した。

魔女だから力の感じ方が違うのかと思いきや、受け取った剣はとやけに軽い。小刀でも持っているかのようだ。

「軽いであろう? 持つ者に合わせて重量が変わるのじゃよ。手によく馴染んでくると、少しずつ形も変わる」

なるほどと思いながら、鞘から取り出してしげしげと眺めた。

魔女は『瑠璃の剣』と言ったはずだ。

なのでどこかに瑠璃の玉でも付いているのかと思ったが、鞘にも、持ち手のところにあたる柄(つか)にも瑠璃はついていないし、瑠璃どころか何一つ目立った装飾はなかった。

「瑠璃というのは、どういうことなのだ?」

宝石どころか、むしろ地味ですらある剣の見た目にミルフレーヌは首を傾げた。

近衛兵が持つどの剣よりも粗末にすら見える。

「月の光にあてると瑠璃色に輝くのじゃよ」

「月の光……。へぇ」

「それから、使えばわかるだろうが、お前の手のうちにある間は剣が勝手に戦ってくれる。だが、手から離れたら動かぬ。剣に負けぬよう、まずは体を鍛えることじゃ」

「わかった」