それからどれくらいの時間が経ったのか。
再びミルフレーヌが瞼を上げた時には、いたはずの森ではなく、見たこともない大きな木の根元に横になっていた。
「こ、ここは?」
「王都の近く、ブロン村の外れだよ」
「あぁ」
ブロン村ならわかる。
行ったことはないが、王都から西へ出たところにある小さな村だ。
「ほぉ、一応国の地図くらいは頭に入っておるようだのぉ?」
クスクスと笑う声にハッとして振り返った。
「……お前は、魔女?」
「そうだよ?」
魔女は子供のように小さかった。
ワンピースのような長い黒い服を着て、黒い靴を履き、ゆるいウェーブのかかった長い髪も真っ黒だ。それなのに唇と瞳だけは紅い。
紅い瞳にジッと見つめられると、背筋がゾクリとした。怖いもの知らずだと思っていたこの心にも、禍々しいものを厭うという気持ちはあったらしい。
明らかに、人間とは違う空気を纏った者にミルフレーヌは眉をひそめた。
にやりと口元を歪めた魔女は、クルクルと杖を玩びながら、甲高い声を出す。
「よーくお聞き。生きていくのに困らないだけの金が入っている財布と、お前を一端の剣士にしてくれる瑠璃の剣。どちらか一つを授けよう、ミルフレーヌよ、お前はどちらがほしいかえ?」
ミルフレーヌは迷わず「剣」と答えた。
「ハハッ。流石に苦労知らずだのう」
魔女は高く笑って杖を振ると、ポンと現れた剣を手にした。