雨音をBGMに、腕の中の呼吸が穏やかになるまで耳を傾け続けた。完全に寝息に代わると同時にベッドを抜け出し、濡れて不快な衣服を身に付けていく。一緒に朝を迎える気はなかった。



離れがたい気持ちから目を逸らして、顔にかかった髪の毛を払う。穏やかな寝顔に安心して、さっきより小さく丸まった身体にしっかり布団をかけた。べたべたとまとわりつく湿度が不快で、エアコンのドライをかけてから家を出た。梅雨入りの知らせが入ったのは少し前だけど、すでに梅雨明けが待ち遠しい。




――よりによって、なんで今日だったんだろうな。留学に行くことを伝えるかどうかは、会ってから決めようとは思っていたけど、結局何も言わずに出てきた。



またひとりがさみしいと泣くんだろう。ただ、他人の体温を覚えた今、これまでのさみしさとは違うものになるだろうか。そのさみしさのなかで、俺を覚えていればいい。


でも、ここで他のやつのところに行くというなら、それはそれでいいと思っている。俺は、もうあの女に勝てないとわかっているから。すべてを受け入れるしか俺に選択肢はない。




「ばいばい」







またいつか。


俺と同じくらい、おまえも俺に毒されていると願ってる。







fin.