空き缶を回収して、ぼんやりと涙をこぼし続ける手を引いた。素直な行動と素直じゃない言葉。その言動をいじらしく思ってしまった時点で、俺はどうやってもこの女に勝てない。ずっと俺の負けでいい。そう思ってしまったのは、いつかの日中、街中で人に囲まれて笑っている姿を見かけたときだった。



見てはいけないものを盗み見てしまったような罪悪感と、さみしくない状況での表情に違和感を抱いた。口ではどんなに適当なことを言っても、感情が駄々洩れな深夜の方がよっぽどいい。



「おにいさん」

「なに」

「どうしたら、涙は枯れるかなあ」



枯らしたいのか?と聞くと、泣きたくないんだあと鼻声でかえってきて笑った。それに不貞腐れて、まじめに言ってるの!と大きく腕を揺らされる。悪い、と宥めながら顔を覗き込むと、こっち見ないでと顔を逸らすから、もっと見たくなるのだといつ教えてやればいいだろう。



危うい足元が愛おしくて、このまま俺の腕に縋っていればいいと思った。泣きたいときに泣けばいい。ばらばらになった感情を吐き出して、最後に残ったものだけを大事に抱えていけばいい。