「それ飲んだら、帰るぞ」

「どこに?」

「おまえの家だよ」



労働で疲れた体にアルコールが染み渡る。ロング缶を流し込んでもつぶれない程度には、酒に耐性があってよかった。



春が終わり、夏のにおいが濃くなってきた頃。週4のバイト終わりに通る公園で、この女と出会った。俺のバイトがない日もここでひとり、飲んでいるのかは知らない。大した会話もせず、知っているのはただ、ひとりがさみしいと泣いていることだけだ。



「あめ?」



手元にぽつぽつと落ちていく雫を見て、そう言うのは何度目だろう。涙腺が馬鹿になってんだよ酔っ払い、と腕を引っ張って立たせる。


俺を見上げてまばたきをする度に、白くまろい頬の上を大粒の雫が転がり落ちていく。拭われるまま俺に身を任せるから、その無防備さに舌を打つ。危機管理はどこにいった。この世に人畜無害な男がいると思ってんのか。



「帰るぞ」