「狂っていると思うか?」
「ああ。馬鹿げてる」
「でも、死にたがりのお前にはぴったりじゃないか?」
牙を出して笑いながら、悪魔は言った。
「それは……」
「なんだよ行くのが怖いのか? あんなに死にたがってたくせに」
俺を小馬鹿にするみたいに笑いながら悪魔は言う。分かりやすい挑発だ。
俺は挑発に乗ることにした。
「馬鹿にするな。行ってやるよ」
俺は男の真横にあるドアの取っ手を掴んだ。
「……不老不死の世界にいったら、この世界の俺はどうなる?」
「存在が無くなる。お前は元から不老不死の世界にいたことになる。学校に転校生とか来るだろ時々。お前はそいつと同じ。この扉の先にある町に初めて来た人間として扱われる。誰も異世界人だとは思わない。ま、お前が異世界から来たっていえばそれを信じる人間はいるだろうがな」
「……そうか。わかった」
俺はドアを開けた。
「未練はないのか? 入ったら最後、永遠に戻れないぞ」
「……ああ」
――この世界に未練なんてない。
未練があったら、自殺しようとなんてしていない。