「はぁ……」
 ため息を吐くと俺は立ちあがって、トイレを出た。
 テレビをつけると、今朝起きた交通事故のことがニュースで報道されていた。

 大まかに言えば、小学生くらいの子供が誤って線路に落ち、電車に轢かれ、見るも無残な状態で死んだとNEWSキャスターはいっていた。

 ――これだ。

 髪色がわからないくらい、もう誰かわからないくらい酷い状態で死んでしまえばいいのではないか。そうすれば、アルビノと間違われて死体を分解されることもない。

 俺はホテルを出て、大阪城のそばの駅のホームに向かった。
 今は九月で、外は随分ぽかぽかしていた。

 いたるところに紅葉がある。

「ねぇ、あの子の髪って……」

 誰かが言う。

「アルビノだ!」

 気分が悪くなった俺は、走って駅に向かった。
 改札を抜け、ホームにいく。何線が通ってるホームの近くの線路で死ぬかはどうでもいい。
 俺は改札から一番近い山木線のホームに行った。
 俺は線路の上に降りた。
 二本ある線路のうち電車が早く来る方の上に立って、俺は空を見上げる。
 死んだら、天国に行けるのだろうか。
 後ろからゆっくりと電車が迫ってくる。
 いざ轢かれると思うと、少し怖いな。
「馬鹿っ!!」
 直後、線路に男が降りて来た。
 男は俺の腕を掴むと、電車が来ない方の線路に俺を連れて行った。

 それからすぐに俺達がいない方の線路に電車が来た。

「……は? お前何すんだよ!」
「……お前、死にたいのか?」
 俺の腕から手を離して、男は言う。
 男は銀色のメッシュが入った黒髪につり目といったどう見ても柄が悪そうな見た目をしていた。
 ピアスも左右の耳にそれぞれ三つ以上は空いていて、本当に悪っぽい。歳は二十代前半くらいだろうか。チャラくて怒ると怖そうな大学生みたいな感じだ。