父親は頭がおかしい。
実の子供を躊躇なく売ろうとするなんて、本当にどうかしている。
「……死にたい」
アルビノと間違われて名前も知らない誰かに殺されて高値で取引されるくらいなら、いっそ自殺したい。
父親は俺を金を手に入れるための道具だとしか思っていない。
最初は抵抗した。
初めて髪を染められた時はべそをかいたし、大阪城のそばのホテルで暮らせって言われた時は、嫌だって声が枯れる勢いで叫んで、全速力で逃げた。
でも、そうしたことに意味なんてなかった。
どんなに逃げても結局捕まってしまう。何故かって? 首に爆弾があるからだ。
首にかかっているネックレスの飾りの中に爆弾が入っていて、それは親父が持っているコントローラーを操作するだけで爆発する。
ネックレスを捨てればいい話ではあるのだが、もし道路に捨てて父親がそうしたのに気づいたら、大変なことになる。
捨てたことに腹を立てて俺を殺すだけならまだしも、もし道路にある爆弾を爆発させてしまったりしたら、本当にしゃれにならない。
まぁ、そもそも親が金のために子供の髪を染めたりすること事態しゃれにならないことなのだが、ネックレスが爆発したせいで無関係な人間が死ぬのだけは、絶対に避けないとダメだ。
無関係な奴は巻き込めない。
俺は自分の命はどうでもいい。
母親に捨てられて、父親に無理矢理髪を染められたあの日、俺は悟った。
――自分は従順な子供でいなければいけないのだと。
父親の手を煩わせたら、殺されるハメになるのだと。