「……何であんなことすんだろうな。大人はみんな最低だ」
「風兎の親のことか?」
 
 首を傾げて、悪魔は言う。

「ああ、本当にひどいよな。捨てるだけじゃなくて、学校も退学させるなんてさ」
「……酷いのは何もコイツの親だけじゃない。虐待をしてる親とか、子供を雑に扱う親は総じてみんなクズだ。まあ、その親のせいで心を痛めて自殺するか、そうしないかは子供次第だけどな。親がどんなに酷い人間だったとしてもそれを気にせず生きようと努力する奴もいるし、お前みたいに自殺しようとする奴もいれば、こいつみたいにショックは受けるけど自殺まではしない奴だっている」

「……自殺しないんじゃなくて、できないんだろ」

「自殺はな? でもいっただろ。植物状態にはなれるって。こいつはそうなろうともしなかった。それがお前とこいつの決定的な違いだ。あんたはいつ死んでもいいと思ってるけど、こいつはそうは思ってない。こいつは命を軽視しちまってるけど、それを止めなきゃいけないと思ってる。そんなこと微塵も考えてないお前と違ってな」

「……だからなんだよ」

「いーや?、何も? 変われるといいな、お前」

「変わる?」