風兎は俺が異世界から来たのを本気で信じてくれて、俺に一緒に暮らそうと言ってくれたから。
二人でご飯を食べて、買い物に行って、あるいは公園とかで何時間も飽きるまで駄弁ったりした。
そこには普通の日常があった。
二人で周りも気にせずご飯を食べて、好きなように遊んで。
道路で元殺人鬼に遭遇したりしたこともあったけど、そこには確かに、俺がずっと憧れていた生活があった。
一生訪れないと思っていた平和な日常は、この世界に来ただけで案外あっさり訪れた。
――自分は一生、大人のおもちゃなのだと思っていたのに。
「なぁ、今日はどこいく?」
二人で暮らすようになってから一週間くらいした日の朝、俺は首を傾げて言った。
「どうしようか? 遊園地でもいく?」
風兎が俺の顔を見ながら言う。
「んー行きたいけど、人多いから元殺人鬼とか犯罪者とか沢山いそうだよなぁ」
元殺人鬼や犯罪者は繁華街だけでなく、水族館や遊園地などにも現れる。奴らは基本人が多いとこに行くんだ。人が多ければ多いほど、沢山怪我をさせられるから。
「……んー、じゃあカラオケは?」
「いいねえ! それ採用! 俺カラオケいったことねぇし!」
思わず手を叩いて俺は言った。
「それじゃあ行こうか」
「おう!」
歯を出して笑って、俺は頷いた。
カラオケは、風兎が学生証を見せただけで二人とも学生料金で入れた。
「風兎、お前そう言えば学校行かなくていいのか? 今平日の昼間だけど」
カラオケの部屋まで歩いてる途中、首をかしげて律はいった。
「……本当は僕、あそこ退学させられたんだよ。だから学生じゃない」