――そう。アルビノにだ。

 アルビノの人間は、アフリカなどの地域では決まって高値で取引されている。四肢と性器、鼻や舌等を合わせておよそ七百万ほどで取引されているそうだ。

 何でそんなに高いか。それは、アルビノの体内には特別な秘薬や魔術が宿っており、幸運や繁栄をもたらす効果があるとか、あるいはアルビノには悪病
を直す力があるだとか、そんなわけのわからない迷信が広まっているからだ。

 アルビノのことを知った父親は、俺の髪の毛や眉毛などの体毛を白く染めて、俺をアルビノだと偽って売れば、かなり高く売れるんじゃないかと。

 日本で外国人がかなり多く訪れると言われる東京タワーや大阪城のそばにアルビノに成りすました俺を連れて行けば、誰かが俺を買いたいって言うんじゃないかと考えたんだ。
 それで俺は五歳の誕生日の翌日髪の毛と眉毛を白く染められ、学校をやめさせられた。それで東京タワーや大阪城のそばのホテルに泊まって暮らすよう言われた。
 買われたら最後、殺されて高値で取引されることになると決まっているのに。

「はぁ……」
 ため息を吐くと、俺は洗面所を出た。
 俺が今いるのは、大阪城のそばのホテルだ。
 俺は一週間前からこのホテルで生活している。父親にそうしろと言われたから。

 五歳でアルビノになりすますよう言われてから、俺は外人に本当に売られそうになっては逃げたりしながら、息を潜めてどうにか生きてきた。

 十五歳の今日まで、毎日死にものぐるいで。