「……肉は好きになれないんだよ。理由はうまく説明できないけど」

 アルビノ狩りのことを言う気になれなかったから、そう言うしかなかった。

「佳南芽? 何でこっち見ないの?」
 風兎が心配そうな顔をして言う。
「風兎?」
 俺の手から買い物かごをとると、風兎はそれを床に置く。
 それから風兎は俺の腕を引いて、男子トイレまで歩いた。

「佳南芽、泣いていいよ。どうせ人来ないから」
 驚いて俺は風兎を見た。
「やっぱり、泣いてるね」
 困ったなあとでも言うように、風兎は肩を落として優しく笑う。
「うっ、うっ、うう……」
 俺は風兎の肩に顔を押し付けて、涙を流した。

「いつか全部話してね。話せるようになったらでいいから」
 何も言わず、俺は頷いた。

 それから俺達はかごを置いといたところまで戻って、買い物を再開した。
 俺が泣いてたのが十分くらいだったからか、かごの中は何も盗まれてなかった。
 まぁ財布が入ってるバックとかじゃなくて籠を置いてっただけなら、その中を盗まれるなんてことは滅多にないと思うが。

 買い物を済ませて家に戻ると、風兎は俺の希望通りオムライスと炒め物を作ってくれた。

「君がきてよかったよ。引っ越すときにうち四人家族だから皿とグラス四つ持ってきたんだけど、一人暮らしになっちゃたから当然使い道がなくてね。もう捨ててしまおうかと思ってたから」
 炒め物がのった皿ちゃぶ台に置いて、風兎は言う。俺はオムライスがのった皿を二つテーブルに置いてから、顔をしかめる。
「風兎、お前家族嫌いじゃねえのか?」
 もしかして、今までグラスを捨ててなかったのは、あんなことされても嫌えなかったからなのだろうか。