「……何で俺もお前もそんな酷い親に育てられたんだろうな」
「わからない。でも、捨てられても生きててよかったよ。こうして、僕の辛さを誰よりも分かってくれる人間に会えたんだから」
俺の頭を撫でて、風兎は歯を出して嬉しそうに笑う。
「……まぁ、それはそうかもな」
「ああ」
そう言って、俺達は笑い合った。
その日の夕方、俺は風兎の部屋のベランダで空を見上げていた。
「佳南芽? 何見てるの?」
風兎がベランダに入ってくる。
「夕焼け。ちゃんと見たことなかったから」
茜色の太陽が見えなくなっていくのを見ながら、俺は言う。
「えっ、本当に? 佳南芽って歳いくつ?」
「十五だけど」
「それで夕焼けみたことないって、どんだけ親に縛られてたの」
「……そうだな。今まではわざと見ようとしてこなかったのかも。親が傍にいないときも、舌ばっか向いてたからな。上向いたら、幸せに暮らしてる人間とかが嫌でも目に入っちゃうから」
「ああ、それはわかるよ。僕が家でもフード被ってるのそれが理由だし。テレビがないと、外の景色も騒音も嫌でも耳に入ってくるからね。フードはそれをなくしてくれる」
「……ああ。なんか俺らって、似た者同士だな!」
そういって、俺は歯を出して笑った。
「そうだね。歳は少し離れてるけど」
「え? 風兎って歳いくつ?」
「十三。不老不死になってから経った年月も足すと、十八になるけど」
「……同い年じゃなかったのか」
「うん。そもそも異世界人の君と同い年の人間なんて滅多にいないんじゃない?」
「それもそうか」
「そうだよ」
直後、俺のお腹が、ぐーっと音を立てた。
「佳南芽? お腹減ったの?」
俺はあまりの恥ずかしさに思わず片手で顔を隠す。