「いや、いいよ。お礼言われる資格ないし」

「えっ、なんで?」

「正直いうと君が元殺人鬼の仲間かどうか疑ってたから。同い年くらいの子で繁華街に大した武器持たずにいる子凄い久しぶりに見たから、もしかしたら殺人鬼と手を組んでるのかと。本当にごめん」

「いや、いい。あの状況じゃそう考えても仕方ないしな。本当にありがとう。あんたが罠かもしれないって思いながらもなんとか勇気を出して助けてくれたから、俺はかすり傷程度で済んだ」

 風兎の頭を撫でて、笑って俺は言った。

「だから、お礼なんていいよ。これは癖みたいなもんだしね」

 そういって首を振り、風兎は作り笑いをした。

「クセ?」
「ああ。僕は自分の命を軽視する癖がついちゃってるんだ。敵味方関係なく、危ない目に遭いそうな人がいたら反射的に助けちゃうんだ。自分のことをどうでもいいと思ってしまっているから」



「……俺もそうだよ。俺も自分の命を大事にできない」
「君もか?」
「ああ」
 そういうと、俺はフードを取り、白髪の髪を風兎に見せた。

「……君、もしかしてアルビノ?」

「違う。アルビノじゃない。俺はアルビノにさせられたんだ」
 俺は、風兎に父親のことを話した。
「……僕の親より酷いね」
「風兎の親?」
「ああ。僕、ここで独り暮らししてるっていっただろう。それ、望んでしてるわけじゃないんだ。させられたんだよ」

「……どういう意味だ?」
 意味が分からなくて、俺は首を傾げる。

「……僕、癌なんだよ」

 顔を伏せていい、風兎は被っていたフードを取った。

 髪の毛がない。少ないとかではなく、一本もないのだ。

「家族にある日突然引っ越そうって言われて、支度してみんなでここに来たんだ。それで病気のせいで気持ち悪くなってトイレで嘔吐してたら、玄関の鍵を閉める音がして、何かと思って慌てて出たら、もう既に部屋の中には僕以外誰もいなかった」

「は? 病気のお前を置いて何も言わずに出ていったのか?」
 思わず声が枯れる勢いで俺は叫ぶ。

「そうなるね」
 あくまで淡々とした口調で風兎は言った。まるでその酷すぎる境遇を受け入れているかのように。
「そうなるねってお前……っ!!」
 その態度を見て、俺は思わず何も言えなくなってしまった。