それから俺は、男の後についていって、五分くらい住宅地を歩いた。
男は五階建てのマンションの前で足を止めた。
マンションの入り口を入ってすぐのとこにあるエレベーターを使って、男は二階まで行く。二階の一番右端にある部屋のドアを開けて、男はそこの中に入った。
「入っていいよ」
「ああ」
俺は雑に靴を脱いで上がった。玄関の右側にトイレと風呂場が横並びで並んでいて、左側にはおそそ八畳くらいの小さな部屋がある。
部屋の中は、小さなキッチンと冷蔵庫の他にに、ちゃぶ台と布団とクローゼットと救急箱くらいしかない。すごい質素だ。極端に物が少ない。
「……君、繁華街に行ったのは初めて?」
「ああ」
俺は頷く。
「そうか。もう行っちゃダメだ。あそこにいる連中は子供と老人以外はみんな元殺人鬼だからね」
キッチンで腕にかかっている布をほどきながら、男は言う。傷口を洗おうとしているらしい。
片手ではなかなか難しいらしく、ほどくのに三十秒以上時間をかけている。俺は慌てて男の隣に行き、布をほどいた。それから俺は蛇口をひねって男の傷口に水を当てた。
「痛っ! うっ!」
水がそうとう染みるのか、男はうめき声を出した。
「はぁっ。もういいだろ。そこに救急箱あるから、それで手当てしてくれる?」
一分くらいしたところで水を止めて、男は言う。
「病院はいかなくていいのか?」
「……病院いくほどの怪我じゃないしいいよ」
まぁ致命傷でもないし、それもそうか。