「はぁ……」
 洗面所にいる俺は、鏡に映っている自分の姿を見て、ため息を吐いた。
 ――俺は自分の見た目が心底嫌いだ。
 老人のように真っ白い髪と、白いまつ毛。黒髪なんて一本もない。
 この世には、アルビノと言う遺伝子疾患がある。
 別名先天性白皮症、または先天性色素欠乏症などどいわれるそれはメラニンが欠乏(けつぼう)する疾患のことで、肌や体毛などの色が薄いのが特徴だ。体毛は白から金色までメラニンの量によって変化があり、また紫外線に弱く、視覚障害などもある。
 視覚障害も紫外線への耐性も体毛と同様、メラニンの量によって変化がある。
 そんな生まれつき苦労が絶えない疾患を患った動物がこの世には確かに存在する。
 俺はアルビノではない。
 ……俺は、アルビノに仕立てあげられたんだ。
 俺は母親がいない。
 俺の父親はパチンコやかけ事が大好きで、仕事にもいかず毎日のようにそれに明け暮れている。母親は、そんな父親に愛想をつかして、俺が五歳の時に家を出ていった。
 何で俺を連れて行こうとしなかったのかは知らない。……育てるのが嫌だったのか、それとも女手一つで育てられる自信がなかったのか。それは定かではないが、とにかく俺は五歳で母親に捨てられ、ろくに働きにもいかない父親と暮らすことになった。
 収入がないくせにパチンコしてばっかだっかからか多額の借金を抱えていた父親は、生きるためどうにか金を手に入れられないかと必死で考え、そこであることに目を付けた。