───現在時刻午前五時五十五分
和哉とともに士郎は城島家を訪れ、インターホンを押す。
「居候屋でーす! 城島さんいらっしゃいますか?」
士郎が引き戸にそう呼びかければ、恐る恐るといった様子でこちらを覗きでてくる男──武雄がいた。
「昨日ぶりですね、城島さん! 約束の五分前ですが、大丈夫でしたか?」
そばにいた和哉は士郎から離れて、今度は武雄の隣にぴったりとついて、表情をつくる。これが居候屋のやり方である。死者の言葉を伝えることも重要であるが死に分かれにより前に進めずにいる生者の不安を払拭もしくは軽減することも役割として含まれている。そのため、和哉に表情の指示を送ってもらい、それを真似て話すことで、城島和哉という人物を演じ、安心感を与えられるよう務めていたのである。
そのあとの煎餅の件も同様で、士郎は和哉からの指示で和哉の普段の食べ方を真似ていたのである。
「僕、煎餅大好きなんですよ」
「わたしの息子も煎餅が好きでね、よく君みたいに両手に持って食べていたよ。懐かしい……」
ここは掘り下げたら駄目だな、と即座に判断した士郎は「へぇ〜、そうなんですね」と流しておいた。
和哉とともに士郎は城島家を訪れ、インターホンを押す。
「居候屋でーす! 城島さんいらっしゃいますか?」
士郎が引き戸にそう呼びかければ、恐る恐るといった様子でこちらを覗きでてくる男──武雄がいた。
「昨日ぶりですね、城島さん! 約束の五分前ですが、大丈夫でしたか?」
そばにいた和哉は士郎から離れて、今度は武雄の隣にぴったりとついて、表情をつくる。これが居候屋のやり方である。死者の言葉を伝えることも重要であるが死に分かれにより前に進めずにいる生者の不安を払拭もしくは軽減することも役割として含まれている。そのため、和哉に表情の指示を送ってもらい、それを真似て話すことで、城島和哉という人物を演じ、安心感を与えられるよう務めていたのである。
そのあとの煎餅の件も同様で、士郎は和哉からの指示で和哉の普段の食べ方を真似ていたのである。
「僕、煎餅大好きなんですよ」
「わたしの息子も煎餅が好きでね、よく君みたいに両手に持って食べていたよ。懐かしい……」
ここは掘り下げたら駄目だな、と即座に判断した士郎は「へぇ〜、そうなんですね」と流しておいた。