「ニホン?」

アルビナさんは日本を知らない。
疑問に思って当然だ。

「なんでもないですよ」

今日作るはずだった料理のメニューを見ると、食べた事のないオシャレな料理や、お酒のおつまみになる料理まで。

「あと3時間位あるからゆっくり作ってね」

「わかりました」

「そうそう、お礼に今日の宿代はタダにしとくよ」

「ほんと! ありがとう」

タダという言葉にルシアは過敏に反応していた。

何から作ろうか。
時間がかかる料理を最初に作った方がいいとはわかるけれど、貰ったレシピが大雑把すぎて分からない。

サラダは直ぐにできるし、スープもそこまでかからない。

「ルシアも手伝ってくれる?」

「もちろん!」

エプロンを借りてやる気満々のルシア。

レシピを見る限り、やはり洋食が多い気がした。

和食が恋しくなる。

留学生の気持ちが今ならわかる気がした。

「ピザと、オムライス、ハンバーグにシャケのムニエル、玉ねぎスープにサラダ、カプレーゼにポテト……作るのが大変だ」

「あのね。今更なんだけど……」

さっきまでテンションが高くて鼻歌まで歌っていたのに、今はモジモジしている。

「どうしたの?」

「私、料理苦手なの」

「そうなんだ。スープとか盛り付けとかはできる?」

「うん!」

ルシアには、玉ねぎスープと、サラダとピザの具材のせを頼んだ。

「僕はこっちでピザ生地作ってるから、このレシピ通りにスープをお願いね」

「了解!」

スープは切り方と味付けの仕方がレシピに細かく書かれていたので、ルシアでも大丈夫なはず。

けれどピザ生地は材料は書いてあるけれど、分量が書いてない。

それに『こねて、形を整える』と作り方が雑。

スープより、こっちの方が細かく指示が欲しかった。

他の料理もそこまで指示が細かくなかった。

もうこうなったら、僕がわかる範囲で頑張ろう。

あとは前世の記憶を頼りにしよう。