ギルさんの後をついて行き、お兄さんを見つけると僕達は隠れた。

ギリギリ会話が聞こえる。

「兄さん、さっきはごめんなさい。マカロン作ったから一緒に食べよう?」

「俺こそごめん、言い過ぎたよ。マカロン作ったのか?」

「あの食堂の人たちと作ったんだよ! 抹茶味」

「マッチャ? お、美味しい!」

「良かった!」

無事に仲直りできたみたいで良かった。

ギルさんは僕らの隠れていたところにお兄さんを連れてきた。

「本当にありがとうございました。何とお礼をしていいか」

「全然気にしないでください。それより仲直り出来て良かったですね」

「ええ。マカロン、とっても美味しかったです」

「それは良かった」

2人とも笑顔で僕らとお別れをした。

「良かったね!」

「そうだね」

「それより私も食べたい!」

「戻ったら食べようね」

「うん!」

スキップをしながら帰るルシア。

「なんかテンション低くない? 顔色も悪いし」

「なのね、僕は別に体調不良とかじゃないの。元々そういう肌色です。ただ……」

「ただ?」

「和菓子が食べたくなってさ」

「そんなことか。心配して損した!」

「僕にとっては重要な問題なの!」

お団子が食べたい。いちご大福が食べたい。

マカロンも同じスイーツだけど、和菓子とはまた違う甘さ。

「じゃあ作ればいいじゃないの?」

「作るったって、流石に和菓子までは作れないよ」

「洋菓子作れるんなら大丈夫!それに私、凄いもの持ってるから!」

そう言って、あの不思議な鞄からひとつの本を出した。

『和菓子の作り方』

表紙にはそう書かれていた。

「いつも頑張ってくれてるからそのご褒美!」

「あ…ありがとう」

僕の目からは涙が流れた。

「泣くほど嬉しいの?」

「うん。泣くほど嬉しい!」

「ほら、みんな心配しちゃうから早く泣き止んでよ!」

「ごめんごめん」

ルシアからの突然のプレゼントはとっても嬉しい物で、レシピ本を頼りに五家宝を作ろう。


食堂に置いていたマカロンはアルビナさんが半分食べていた。

「これ私のなのに!」

「とっても美味しいから止まらなくて」

「ルシア、急いで食べなくてもまた作ってあげるから!」

食い意地の張っているルシアは今日も口いっぱいに食べ物を詰めている。

「イブキ! ちょっと助けて!」

「どうしたの?」

「野生のオークがお腹空かせて暴れ始めて大変なんだ!」

「この街の野生の子達はお腹が空くと暴れ出すのか……ルシア準備だ!」

「了解!!」