目を開けると、そこはヨーロッパの雰囲気に似ていた。

「まって、人間いなくね?」

辺りを見渡すと、獣の耳をはやしていたり、髪の毛がピンクや青など個性的な色をしていたり、見た目から魔女だと分かる格好をしていたりと様々。

僕の髪の毛は真っ黒。The・日本人って感じ。

お隣のお絵描きはさっきから興奮しっぱなしで、目を輝かせている。

「それより、どこ行く?」

「本に書いてあるけど、まずは宿探し。そして、お金を稼がないと生活出来ないわ。お金は10万ポット。嬉しいことに、日本とほぼ同じ物価よ」

「同じ物価は嬉しいけれど、なんでそんなに詳しいの?」

「あれ? 自己紹介してなかったっけ?」

「うん。なんて呼んだらいいかな?」

「私の名前はルシア。入口管理人、学生課、転生係よ」

「入口管理人、学生課、転生係?」

「そう。あなたが私と初めてあったあの場所か入口ね。そこの管理をしている仕事。学生課っていうのはまあ、学生を相手にするのよ。転生係は転生させる。理解した?」

「まあまあ理解した。それで、転生係ってことは、元々俺は転生する予定だったってこと?」

「人は亡くなったらまず年齢別に部屋に分けられて、次に、ある基準によって、転生か天国か地獄かに分けられるの。強制は出来ないけれど、私の所に来たら、なるべく転生転生させたいわね」

「ある基準?」

「そう。秘密だけどね」

人差し指を自分の唇に当てながら、笑っている。

「僕達が転生してきたって信じてもらえるかな?」

「貰えないでしょうね。だって、輪廻転生なんて神の世界だもの。」

「神様か……」

「旅人という設定にしましょ?」

「そうだね。」

「やっぱり1番大変なのは地獄係?」

「急に話変えるね。1番大変なのは、高齢課かな? 話が長いし、昔話とか始めるって聞いたわ」

「それも大変だね」

確かに、おばあちゃんはよく同じ話を何度も繰り返すし、話が長い。

ずっと相手するとなると、俺もキツいな。

「それより、あなたは?」

「僕の名前はイブキ。高校2年で運動とか勉強は苦手。」

「あははっ! 運動と勉強苦手だったらモテないじゃないの」

お腹を抱えながら笑っているルシアに少し怒りを覚える。

「それより、早く宿探しとかしないと」

「そうだね」

下手に歩き回っても疲れるだけだと思い、町の人に聞くことにした。

「あの、どこかに宿とかってありますか?」

「ああ、旅の方ね。ちょうど私は宿を営んでおりますので是非どうぞ。少し安くしてあげるよ」

「ほんとに? いいじゃないイブキ!」

「ありがとうございます。お願いします」

「そう来なくちゃ!」

うさぎの耳をつけた少し人生経験が長そうな女の人に助けてもらい、何とか今日の夜はゆっくり過ごせそう。