日本でもこういう題材をドラマにしたりしていたが、残念ながら観てなかったからどう対処したらいいか分からない。

男の人は裕福な家庭で過ごしてきたのだろうか?

両親に反対されての結婚はその人達も、両親も辛いと思う。


「気持ちはしっかり伝えましたか?」

「気持ち……ですか?」

「はっきり言わないと伝わる事も伝わりませんよ」

「確かに、私はいつも空気を読んで下を向いてばかり。言われてみれば、自分の気持ちを言ってなかったかも知れません」

大人しめの性格だからなかなかはっきりと意見を言えないんだろう。

「彼氏さんなんだからしっかり支えてくださいね」

「はい」


最後のお客さんを見送り、オムライスを食べる。

ルシアは片付けをしてくれている。

「すごく好評だったよ! 明日からもお願いできるかい?」

「アルビナさん!」

急にアルビナさんの声が聞こえて振り返ると、アルビナさんが立っていた。

「それはいいんですけど、僕の国の料理も作ってもいいですか?」

「全然構わないよ。今日からこの食堂は君達が好きにしなさい」

「ありがとうございます!」

「私も頑張るから!」

ずっとチヤホヤされていたルシアにはここは居場所がいいみたい。

初めは緊張で上手く話せてなかったけれど、最後の方はみんなとしっかり話せた。

この街の人はみんな優しくて、人との距離感がちょうどいい。

「朝はここに泊まっている人のみ。お昼はなしで、夜は止まっている人プラス外からのお客さん。」

「分かりました」

「宿代は給料から引かせてもらうよ。仕込みの時間とかは自分達で決めていいよ」

「はい!」

「食料とかはどうするの?」

ルシアの質問にアルビナさんは「毎朝届けてくれるひとがいるから大丈夫」と笑顔で言った。

片付けを終えて部屋に戻る。

この世界は朝早くから働く人は料理を作る僕達や材料屋さんとかで、朝ごはんは8時からと言われた。


「明日は6時から仕込みするから起きてね!」

「早起きは得意だから大丈夫!」

なるべくお金はかけたくないので、一部屋しか借りてない。

ベッドは2つ。窓側のベッドをルシアに譲ってあげた。

「本当に、イブキは料理上手だね!」

「ありがとう」

「なんでそんなに料理が上手なの?」

「ああ僕、母親を小さい頃に亡くして父親が仕事から帰ってくるまでおばあちゃん家にいてさ。それで手伝いとかしてたらいつの間にかできるようになってて」

「そうなんだ。なんか悪いこと聞いたね」

「大丈夫。それより早く寝よ? 明日も早いし」

「うん! おやすみ」

「おやすみなさい」

話すつもりはなかったけれど、聞かれたなら仕方が無い。
部屋の電気を消して、僕も眠りについた。