「残念ですが、現実を受け入れてください」

何があったのかも分からないまま、知らない部屋の椅子に座っていた。

目の前には異世界が舞台のアニメでよく女キャラが着ている、少し露出多めの服を着たすごく美人なお姉さん。

「あの……」

言いたいことも言えない俺に、お姉さんはため息をついた。

「だからね! 死んだのあなたは!」

ここはどうやら、死者の世界みたいだ。

僕は事故で死んでしまったらしい。

けれど、僕は事故にあったことも覚えてないし、そもそも信じられるわけが無い。

「物分りの悪いやつだな。何回同じ説明をした? 私もう疲れたんだけど」

どうやらお姉さんを怒らしてしまったらしい。

「これから、どうすればいいんですか?」

この質問はきっとここに来たみんなが質問するだろう。

質問を聞いたお姉さんは足を組み、自信満々に言った。

「異世界転生するしかないでしょ?」

「えっ?」

「えっ?」

異世界転生!? 異世界転生って最近流行ってるやつだよね?

最近になったり、魔法が使えたり、ダンジョンでバトルをしたり……

「どうするの? 転生するの? しないの?」

「転生をしたらどの世界にいくの?」

「簡単よ。異世界よ、異世界! この世界はみんなのんびり暮らしているから、特に大きな争いもないから安心しなさい」

「じゃあ、転生を断ったら?」

「それは私の業務外の仕事。担当が変わって、その担当に聞くといいわ」

せっかくなんだから異世界転生したい。

けれど、不安の要素も大きい。

「どうするの? 異世界で新たな人生を過ごせばいいじゃない。言語とかは私の力で何とかなるし、みんな優しい人だから大丈夫よ?」

「じゃあ、異世界行ってみようかな?」

「そうこないと!」

僕の答えを聞くと、勢い良く立ち上がり何やら準備を始めた。

「この鞄には転生する世界のお金のことや、簡単なルール、困った時の頼り先などが書いてある本と、少しのお金が入ってるわ。そして! 私も連れてって?」

「えっ?」

「えっ?」

ルールブックやお金はありがたい。

けれど、なんで?

なんでお姉さんまでついてくるの?

「り、理由を聞いても?」

「よく聞いてくれたわね! ここに居ても暇だし、異世界って1度行ってみたいじゃない?」

「そうなんだ。良いよ別に。ひとりじゃ心細いと思ってたし」

「ほんとに? やったぁ!」

「そんなに喜ぶ?」

「うん! ここは本当に暇だから」

「暇なんだ」

「じゃあ早速、行きましょ!」

お姉さんが変な呪文を唱えると、大きな扉が現れた。

「さあ、スローライフの始まりよ!」

そして、僕らは扉の中へ足を踏み入れた。