十二月二十四日の終業式が過ぎ、冬休みに入った。宿題は、学校の登下校の時間を利用してやっていたため、ほとんど無い。もちろん、電車に乗車する人が多ければ邪魔になってしまうので、その場合には(あらかじ)め携帯電話のカメラ機能とアプリを利用して、写真として収めておいたまっさらな宿題に書き込み、後に家で答えを写していたのだ。悟の成績といえば、真ん中より上というだけで特別に賢いというわけではない。だが、要領は良い方であろう。

今日は十二月二十七日午前九時頃である。悟は家族そろって朝食を食べていた。

「あら? あなた、イチゴ食べた?」

母は冷蔵庫からイチゴの入ったパックを取り出して首を傾げると、悟と朝食をともにする父に聞いた。

「いや、食べてないが……」

父は首を横に振ると母の視線が悟に移る。両頬をパンパンにしたままの悟は父と同じく首を横に振って否定する。

「ちょっと、これ見て……」

テーブルの上に置いた一パックのイチゴを悟と父は手に持った箸を置いて、身体をずいっと前に出し、パックの中身を見た。そして、それを見たふたりは呆れたといった顔で母を見る。

「母さん、これを見て俺が食べたと思ったのか……」
「#&/@$€%#〆^……(俺、こんな食べ方しないよ……)」

「悟、その顔を見れば何を言いたいのかなんとなくわかるが、ちゃんと口の中のものがなくなってからな」

悟が咀嚼(そしゃく)をはやめて喉をごくりと鳴らした。

「俺、こんな食べ方しないよ……」
「ネズミ、あたりのしわざじゃないか?」
「かじった跡も人間より小さいね」
「ご、ごめんなさい。は、ははははは」

パックのイチゴは元々入っていた量よりも減っていて、入っているイチゴについてはかじった跡が所々にある。これを人間のしわざだと考えてしまう母は天然だと二人は思っている。

「ネズミかぁ……母さん、イチゴ以外に被害はないか?」
「今のところないと思うわ」
「なら(しばら)く様子みるか……被害が目立ってきたらネズミの駆除とかも考えないとなぁ」
「そうね」

そして、この日の夜、異変が起こった──。