「さすがミッチェルだな。最初にバカ高い物を見せておいて、安い物を買わせる作戦だ。道具屋には出来ない手法だな」


マスターは感心したように頷いていますが……そもそも道具屋の道具は単価が安いですからね。


一つをこんなに高く売るなんて出来ないです!


「さあ、買うのか買わないのかハッキリしやがれ! そのショボい銅の剣に棍棒で、武装した人間に勝てると思ってるなら、そのままでいるんだな! 今のテメェらの装備じゃあ、この善良な武器屋にすら勝てねぇぜ!?」


ミッチェル杉下さんが、ゴブリンキングを追い詰めます!


いや、ドラゴンを無傷で倒すことができる武器屋に勝てる魔物なんて、そうはいませんよ。


ゴブリンキングを応援したくなるのはなぜでしょうか。


でも、それを知らないゴブリンキングは頭を抱えています。


今しがた、マスターにボッコボコにされた事が頭に残っているのでしょうか。


物凄く悩んでいますね。


そして、しばらくして……見張りのゴブリンが、慌てた様子で中に入って来ました。


「ギギッ! ニンゲン ガ キタゾ! フタリイル!」


これは……まずいです!


私達が魔物と取引をしているのは、一般人に知られてはいけないのです!


「チッ! じゃあこうしよう。その鋼鉄の剣を、一度だけ貸してやる。その威力を確かめて、気に入ったら購入する。どうだ?」


こんな時でもミッチェル杉下さんは商売を忘れてはいません。


「……イイダロウ。気ニ入リハシナイダロウガ、借リテヤル」