「それは違いますぞ! 魔王の魔力が感じられず、探す手段がなかったのです! 偶然、今日の昼間に、強大な魔力を一瞬感じる事が出来たので、まさかと思いやって来たのです」


ああ、ワシラスを消滅させたアレですね。


魔王の魔力が戻った証拠でしょうか?


「まあ、どうでも良いわ。今はかずおの好きにさせておくが良い。わしにはやらねばならぬ事があるからな」


「!? 魔王様ともあろうお方が! 魔王の座を放り投げてでもやらねばならない事とは何なのですか!? 魔界の危機なのですぞ!」


「あ、いや……道具屋に借金があってな……そこの娘に命を救われた。命を救われた恩を返さずに、何が魔王だ」


グレゴリーを引き剥がし、マントを翻して背中を向けます。


魔王……最初はただの変な親父だと思いましたが、そんな風に考えていてくれたんですね。


ズロースじゃなければ、決まっていたかもしれないです。


「しゃ、借金!? それはいくらなのですか! このグレゴリー、おかんの財布から、バレないように毎晩100Gずつ抜いているので、多少の金なら……」


中学生ですか!


こいつら本当に人間から恐れられている魔物なんですかね?


家計を苦しめる、ある意味恐るべき存在ではありますけど。