「良かったじゃないですか魔王さん! 毎日の光熱費と食費で借金が膨れるだけだったんですから、これで自由の身ですよ!」


やっと道具屋として働けるようになり始めたから、少し寂しい気もしますが……元々は借金返済の為にここにいたので仕方ないです。


でも……魔王さんの顔は全く嬉しそうではありません。


それどころか、怒っているようにも見えました。


「ええい! ふざけるなこのドサンピンどもがっ! わしの借金を肩代わりする金があるなら、その金でこの村に医者の一人も呼べ! それが出来ぬなら、その金で村人が怪我をした時に自由に使える回復薬でも用意してやらないか! わしが人間に借りを作るなど、絶対にあってはならん!道具屋で働いて借金を返す。それがわしのプライドだ!」


お金の入った道具袋をマスターに突き返し、魔王は二階の自室へと歩いて行きました。


借金返済のチャンスだったっていうのに、一体何を考えているんですかね、魔王は。


それにしても、魔王までドサンピンという言葉を。


一体どういう意味なんでしょうか。


「ふっ……まあ、素直に受け取るようなやつじゃねぇよな。村人が怪我をした時に自由に使える回復薬な。なかなか粋な事を考えやがるぜ」


マスターはわかったような感じで笑っていますが、私にはさっぱりわかりません。