村人の治療が終わり、私達が道具屋に戻ったのは夕方。


思いもよらない魔物の襲撃で、今日一日大変でした。


「ふぅ。人間とは何ともひ弱な生き物よ。あの程度の怪我、我々魔族ならかすり傷ですらないわ! ふははははははっ!」


店内に、魔王の笑い声が響き渡ります。


でも、魔王の活躍で助かったって、村人全員が感謝していましたよ。


そんな魔王に、マスターが歩み寄って肩に手を置きます。


村を守ってくれた感謝の言葉を掛けようとしているのでしょう。


「魔王よ、このドイナーカ村を守ってくれた事を感謝する。それでだな。村人にお前の事を話したら、皆が命の恩人の為にと、借金の肩代わりをしてくれてな。もうお前はこの店に何の借りもない。これが村人からの厚意だ、受け取れ」


笑う魔王の前に、道具袋を差し出して、借金を差し引いて余ったであろうお金を差し出したのです。


マスターの言葉に、魔王の笑いが止まります。


まさかこんな事をしてくれるとは思わなかったのでしょうか。


働いても働いても、借金がかさむだけの魔王にとってはラッキーそのものじゃないですか!


それを受け取って、魔王は不思議そうに首を傾げました。