道具屋……と言うより、お店の基本は笑顔です。


これが良いか悪いかで売り上げに大きく影響すると言う事を、世界道具大全(マニュアル)を使って魔王に徹底指導。


「良いですか? 笑顔は自然に、楽しい事を考えた時に出る微笑みを、お客様に向けるんです。はい、楽しい事を想像してください」


「なかなか厳しいのう。ふむ、楽しい事か……王国焼き討ち……人間大虐殺……ふふっ」


あ、今の笑顔は良かったです。


言ってる事は物騒だけど、それとお店の売り上げとは関係ないのでこの際無視ですよ。


「ところで娘よ、店はいつもこんなに暇なのか? 給料が歩合制と言うならば、客が来なければいつまで経っても支払いが出来ないではないか」


あ、重要な所に気付きましたね。


この村は人口30人の小さな村です。


村人用の日用品や食料と、旅人用の回復薬なんかを扱っていますが、外からのお客さんなんてほとんど来ません。


「文句を言っても、お客さんは来ませんよ。せっかくのお客さんを魔王さんが消してしまったじゃないですか。上手くやればリピーターになってくれたかもしれないんですよ?」


「お、おのれ! 謀ったか! だが……この魔王をなめるなよっ!」


魔王こそ、道具屋の仕事をなめないでほしいです。


地道な努力が、お店の発展に繋がるんですよ。